「0」なのか、「7」ではなく。

必要があって、近くの図書館に赴く。「総記」の棚を眺めていたら、田中淑恵著『本の夢 小さな夢の本』を見つけた。著名な製本作家である田中さんのエッセーは、いつも駆け足な印象なのだけど、読み終わった直後にたいてい、「人の声」や「昔の街の雰囲気」や「まだ読んだことないけど面白そうな本の気配」が、少し遅れて立ち現れるのである。軽快だけど密度が濃い。一度書いてから、余計な言葉を削っていくスタイルなのかな、と思う。物語のあらすじの巧みなまとめ方などからも、そんな気がする。

ところで、製本作家のエッセー集がなぜ「工芸」もしくは「芸術」ではなく、出版や図書館に関する書籍が並ぶ「総記(0類:分類記号が「0」から始まる)」の棚に配架されるのか。ちょうど近くに『NDC 日本十進分類法 新訂10版』が有ったので索引を調べてみると、「製本」の分類記号は「022.8」。田中さんの著書の背にもこの数字の印刷されたラベルが貼られている。改めて『NDC』の記述を見たところ、「022.8 製本 : 製本史. 製本材料. 製本技術. 修理技術. 製本機械. 製本器具」となっていた。つまり産業及び技術としての製本。

それでは「芸術(7類:分類記号が「7」から始まる)」の分類に、「製本」が収まる場所は無いのか? 調べてみると、「749 印刷」の備考欄に「*印刷(図書)→022.7 ; 出版→023 ; 製本→022.8 ; 編集→021」とあり、この指示によって、製本が芸術の世界から退けられていると分かる。その結果、例えば「絵巻物」は絵画の扱いで「721.2 大和絵. 絵巻物」、日本の工芸製本の最高峰「嵯峨本」は「022 写本. 刊本. 造本」、料紙などに贅を凝らした「古写経」は「183 経典」というように、別れてしまう。

まあこんなのは「工芸製本中心史観」でしかないけれど、普通に図書館利用者としては、特に昨今の工芸製本についての書籍なら、出版点数も増えているし、「750 工芸」の内のどこかにまとめて置いて欲しく思う。「594 手芸」だとまたちょっと違うかな。製本は一応「総合芸術」だから。

そういえば、洋書の分類で使われている『デューイ十進分類法(DDC)』ならどうなっているのだろう。「工芸製本」で立項されていても僕は驚かない。手元には無いので、いつか機会があれば調べてみます。