本は建築

とりあえず一区切り付いたので、去年から放置したままだった、家の壁紙貼りを再開する。隅に押し込むときはかけへら、継ぎ目を押さえるときは竹ゆびわ。何かと製本道具が活躍してくれる。そういえば、寸法を測ったり直角に定規を合わせたり隙間なく貼り込んだり、やってることも変わらないなと思う。以前、製本工房リーブルの岡野先生が、「『製本は建築に似ている』と誰かが言ってたらしい」と仰ったことがあった。一瞬「どちらも中に入れる」ということかしら、と思ったけれど、そういうことではなさそう。設計し、材料を選んで、「中」を築き、「外」を構える。壁紙は喩えるなら見返しかな。

確かその辺りのことが、海野弘さんの本の序文に書いてあったような気がする。書棚から『世界の美しい本』『おとぎ話の古書案内』(どちらも海野弘解説・監修、パイ・インターナショナル刊)を取ってきて、開いてみる。恩地孝四郎かなと思ったらウィリアム・モリスであった。モリスの「理想の書物」からの引用に続いて海野さんはこう記す。「ここで重要なことは、モリスが本(書物)を建築にたとえていることである。建築は見えるものであり、構造的なものである。<本>は一種の建築なのだ。扉があり、柱がある。章は部屋なのだ。」

しかしこの海野さんの2冊は、どちらも素晴らしい。まず図版がきれい。文章はいつものように己が無く、精緻。そしてソフトカバーで価格も抑えめ。私は前の職場の古書店で海野さんをよくお見掛けしていて、その佇まいに、おそらく青年期から変わらない「反権力」の魂を感じていたので、この装丁と値段にも勝手に納得して喜んでいる。やわらかい建築。権威的でない。誰でも中に入ることができる。