東京のJR線。そういえば、

東京のJR山手線外回りの秋葉原駅ホームから、ヨドバシカメラ秋葉原店がよく見えるのだけど、あの建物はまるで要塞みたいだなあといつも思う。建物が周囲に比しても巨大で、コンクリート打ちっぱなし。垂直にそそり立つ壁面に窓が少なく、隙が無い印象。しかし一体あれは、何から何を守っているだろう。

JR中央線で新宿から吉祥寺へ行くときにも、進行方向右側にやはり要塞のような建物があって気になっていた。地図で調べてみたら、それは女子校かもしれない。ネットで建物外見をみるとそれほど要塞感が無いのだけれど、位置的に多分そう。これならわかりやすい。女子たちを守るというメッセージ。親御さんも安心。

外側を強固にして、内側に大切なものを蔵する。それはどこか「パッセ・カルトン」を連想させる。製本工房リーブルの工芸製本科で習うことが出来る、ヨーロッパの伝統的な製本術である「パッセ・カルトン」は、中身と表紙を綴じ付けて一体化するため、開きが悪くなって読むには適さないけれど、本文部分はしっかりと守られる。この「中身を守る」ことが、工芸製本の第一義であるはず。

しかしここで思う。工芸製本において表紙は「外部」なのか? 全体を作品と捉えるなら、表紙も「内部」なのではないか? 

そういえば、製本工房リーブルの最寄り駅のひとつ、JR水道橋駅の構内に以前、立ち食い蕎麦の店があった。現在は取り壊されて公衆トイレになっている。とても狭い店で、5人も入れば満員になるほど。あるとき、いつものように店に入ると女子高校生3人が並んで食事をしており、私はその手前に一人分の空間を確保した。すぐに蕎麦が出来上がり、私も食べ始める。しばらくして、ひとりの女子がテスト勉強の仕方について話はじめた。「わたしは新聞の折り込みチラシの裏にバーっと書いて、覚えたらすぐ捨てちゃうの」。次に真ん中の女子が「わたしはレポート用紙にとりあえず書いていって、後でノートにまとめる」という。最後に私の隣の女子が「わたしは最初からきっちりノートにまとめて、それを何回も読んで憶える」と。そこでなぜか、並ぶ順番からして私も自分の勉強法を発表しなければいけないような気がした。女子たちも数秒の沈黙。私は「内部」に組み込まれているのだろうか。耐え切れずに蕎麦を派手にすすると、女子たちの話題は別のものに移った。

水道橋駅の改札を出て左手に進むと、交差点の手前に赤い帽子をかぶったおじさんが佇んでいる。雑誌「ビッグイシュー日本版」の販売をしているひと。今号の特集は面白かった。「あなたもつくれる! 小さな図書館」。もともとはアメリカで「リトル・フリー・ライブラリー」という名で広まっているらしい。鳥の巣箱を大きくしたような、扉付きの本棚に、自分の蔵書をしまっておく。通りがかった人が本に興味を持ったら、そこから自由に借りていく。大阪府泉佐野市でこの活動をしている高島直子さんは、「本箱を置いたことで『こちらは地域に対してオープンですよ』とメッセージを発していることにもなるんだと感じています。」と語っている。

私も製本に関する本をコツコツ集めているのだけど、いつかひとに貸し出せるようにしたいとずっと考えていたので、参考になった。ちなみにこの雑誌自体は、営業妨害になるので貸し出し不可。

*文章をだいぶ直しました。飲酒しながらの作文は控えたい。(1/28)。